今回紹介するのは2014年のインド映画「PK (原題:PK)」です!
以前ハマったインド映画「きっと、うまくいく」の監督と、ランチョー役のアーミル・カーンが再びタッグを組んだ作品だそうで、見るのを楽しみにしていたんです。
「きっと、うまくいく」と異なりSF要素のある本作ですが、どちらも一風変わった主人公が社会の現状に疑問を持ち、最後には変化をもたらすきっかけを作るというストーリーはどことなく共通しています。
目次
▶あらすじ
▶宗教問題に鋭く切り込む
▶愛すべきキャラクター「PK」
▶くせになるミュージカルソング
▶まとめ
あらすじ
物語の主人公は宇宙からやってきた、人間の姿をしたエイリアン。
地球に着陸した彼は、大切な宇宙船のリモコンを盗まれてしまい、自分の星に帰れなくなってしまいます。
同じ頃ベルギーに留学しているインド人女性のジャグーは、街で出会ったパキスタン人の青年・サルファラーズと恋に落ちます。
しかしインド人でヒンドゥー教徒のジャグーは、パキスタン人でムスリムの彼との恋愛を両親に反対されます。さらに両親が信仰している導師は、サルファラーズがジャグーを裏切ると予言します。
時が経ち、TVリポーターになったジャグーは、駅で奇妙な格好をし「神様は行方不明」というチラシを配っているあのエイリアンに出会います。
奇妙な行動から人々にPK(酔っ払い)と呼ばれる彼は、リモコンを取り戻すために神に頼ろうと様々な宗教の教えを実践し、それでも自分を助けてくれない神様は「行方不明」なのだと言い探しているのです。
そんなPKとニュースのネタが欲しいジャグーは、リモコンを取り戻そうとする過程で、インド人の宗教観や神への信仰を揺るがす思わぬ騒動を巻き起こすことになるのです。
※以下ネタばれを含んでいるので、未見の方はご注意ください。
宗教問題に鋭く切り込む
映画を見始めたときは、一風変わったエイリアンの主人公が地球で起こすどたばたを描いたゆるーいコメディなのかと思っていました。
けれど後半にいくにつれて、意外と宗教問題に鋭く切り込んだ映画なのだとびっくりしました。
もちろん最後までくすっと笑えるシーンや楽しいミュージカルシーンもたくさんで、純粋にエンターテイメント性の高い映画でもあったのですが。
主人公のPKは最初、人間の宗教も文化も全く理解せず、疑問に思ったことを子供のように無邪気に質問します。
宗教やインド社会の矛盾を突いた彼のセリフが、時にはすごく鋭くて考えさせられました。
PKが「兄貴」と慕っていた人物が神の名を語った爆破テロで亡くなり、その直後PKが導師とテレビで直接対決するシーンは一番心に突き刺さるシーンでした。
神様には2種類いて、人間を創造した本物の神様と、人間によって創られた偽の神様がいる、人間は前者だけを信じるべきだ、とPKは訴えかけます。
自分自身は日常生活で特に宗教や神を意識することがないので、宗教に没頭する人の気持ちは理解しにくいこともあります。
確かに胡散臭い感じの宗教や信仰もあるけれど、自分にはあまり関係ないし、それによって救われる人がいるのならそれはそれでいいんじゃないかとも思っていました。
けれど確かにPKが指摘したとおり、現代にはあまりに多くの偽の神様がいると気付かされた気もします。
神の名をかたったテロを起こしたり、これは神が望んでいることだからと人を従わせようとしたり、あまりに神様というものが気軽で人間に都合の良いように使われているんじゃないか、とこの映画を見て改めて考えさせられました。
愛すべきキャラクター「PK」
インドでは賛否両論だったらしい本作ですが、宗教感覚の薄い日本人としては娯楽映画としても純粋に楽しめる作品だったと思います。
特にPKはきょとんとした顔が可愛い、愛すべきキャラクター。
最初は地球の言葉もわからなかった彼が、人間の宗教や文化、そして自分を助けてくれるかもしれない「神様」について学んでいく過程は見ていて面白かったです。
殴られないように神様のシールを顔に貼ったり、「踊る車」から服やお金を調達したり、お金だと思ってガンジーの写真を集めまくったり・・・とエイリアンならではの(?)奇想天外な行動には思わず吹き出してしまいました。
地球の文化を何も知らないPKの発言は、無邪気でくすっと笑ってしまうものも多いなか、なかなか鋭いところをついているときもあるんですよね。
また、ジャグーとPKの絶妙なコンビもすごく好きでした!
PKはあるおじさんが妻の誕生日を祝っていたことをぴたりと言い当て、ジャグーが彼は本当にエイリアンだと信じるようになります。
ジャグーに恋をしてからのPKは特にかわいい!(笑)
ジャグーが口元についた飲み物を拭いてくれるようにわざとつけたり、おしゃれして全身にスプレーをかけたり、名刺に “I Love You” と書いて渡そうとしたり、直接言えない不器用さがなんだか愛おしかったです。
主演のアーミル・カーンさんの細かい表情や仕草がすごいなあと思いました。
最後はジャグーのサルファラーズに対する想いを知り、何も言わずに身を引くPKの気持ちを考えるとちょっぴり切なかったですね。
自分の星に持って帰るカセットテープに吹き込まれているのは、さみしくなったときに聴く鳥とかの声と言いつつ、実は全部ジャグーの声の録音だったっていうのがもう・・・。
ただラストではPKが調査で再び地球を訪れており、また2人は再会できたのかなあ~と考えたり。
くせになるミュージカルソング
またインド映画ならではのミュージカルシーンも秀逸でした!
今回も聴けば聴くほどくせになる音楽がたくさんで、しばらくはサウンドトラックをリピートして聴いていました。
「Nanga Punga Dost」は映画のエンディングロールで流れる曲。
軽快で楽しい一曲で、聴いてるだけで明るい気持ちになれます!
「Tharki Chokro」は誰これ構わず手を握ろうとするPKに兄貴が歌うシーンで流れる曲。
豪華絢爛でザ・インド映画的なミュージカルシーンが見ごたえたっぷりでした。
そのときのPKのきょとん顔がかわいい。
「Chaar Kadam」はジャグーとサルファラーズがベルギーの街で恋に落ちるシーンで流れる曲。
のびやかでロマンチックな雰囲気のある一曲です。
「Bhagwan Hai Kahan Re Tu」は、PKが神様に答えてもらおうと様々な宗教の教えを実践する場面で流れます。
自分の祈りに応えてくれない神様へのPKの悲痛な心の叫びを表現したような、胸に迫る一曲。
「Love Is a Waste of Time」はジャグーに恋したPKのシーンで流れる曲。
PKが電車のなかで、(妄想の)ジャグーにほっぺチューされたあと、おじさんの膝の上でぴょんぴょん飛び跳ねてるシーンがすごくツボで何度見ても笑ってしまいます。
まとめ
宗教による争いなど現代の問題について考えさせられる一方で、PKの地球での冒険にはらはらどきどきしながら見ることのできる、とっても楽しい映画でした。
引き込まれるストーリーやユニークな登場人物たち、そしてキャッチーなサウンドトラックなどがそろい、自分のなかでは「きっと、うまくいく」に負けず劣らず好きなインド映画です!